そぼ降る雨の中、この島でもうひとつの神の棲み家、バトゥカウ山へ向かった

バリで神の山といえばアグン山である。
中腹にはバリ島最大の
ヒンドゥー寺院ベサキがあり、
まさに島の人々の信仰の中心である。
もちろんバトゥカウにも
ヒンドゥー寺院はあるのだが、
訪れる人も少なく、
荒れた参道や苔むした塀が
かえって悲しいくらいに神秘的に見える。
そんなバトゥカウへ向かった。

ゆるやかな登り勾配をクルマは走った。ジャティルウィの村に入ると左手に素晴らしい景色が広がった。眼下は目に沁みるほどの緑の海だ。いまにも雨を降らせそうな雲がバトゥカウの山から湧き出て、頭上を覆った。緑はさらに深みを増した。西の方向に頭を向けると、地平線の彼方にあるタナ・ロットの辺りだけに明るさが残っていた。右手を見るとバトゥカウの山はすっぽりと厚い雲に隠れていた。
バトゥカウは、訪れる観光客にとってこれといったスポットはないものの、レインフォレストという名の深いジャングルある。曲がりくねった道を進めば進むほど、雨の匂いを含んだ濃厚な空気に包まれた。やがて深い霧に覆われて、いつか私は道を見失ってしまった。信仰心のない者を拒んだのだろうか。密やかな世界を感じずにはいられない。確かにここは神の棲む場所かも知れないと思った。

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