ロバートMカニンガムは、70年代から80年代にかけて活躍したイラストレーターである。もちろん会ったこともないし、写真で顔を見たこともない。経歴も知らない。ただ作品だけは知っていた。同時代に活躍していたブラッド・フォランドやダニエル・シュワルツなどと共にあこがれのイラストレーターだった。
ある時、妻と一緒に百貨店に出かけ、何気に美術品フロアーを見ていると、どこかで見たような絵が掛けられていた。「あれっ、もしかして…」。サインを見ると、何とロバートMカニンガムではないか。まず値段を見た。私にも買えない金額ではないが、ほぼ無名の作家の版画にしては高かったかようにも思えた。とはいえ、あこがれのカニンガムなのだ。さっそく妻にカニンガムが誰かを説明して買いたいと願った。妻もこの絵が気に入ったらしく、快く承諾してくれた。しっかりとしたデッサン力に大胆な画面構成、そして何よりビビットで明快な色使いが好きなのだ。。
カニンガムはスポーツイラストが得意で、アメリカンフットボールや野球、スキー、ヨットなどの作品がある。もしかするともっと他にも作品があるかも知れない。係の人にカニンガムの絵は他にもあるのかと尋ねたのだが、初めて聞く作家名で、これ一枚しかないと言われた。やっぱり日本では全くの無名だった。画家ではなくイラストレーターだったことも、美術を扱う業界には軽い存在だったのかも知れない。それにしてもリトグラフとはいえ、それが我が家にあること自体、奇跡のように思えてならない。

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