あれっ、風邪かなと気づいたのは、旅行に出かける2日前だった。その3〜4日前から喉がイガラぽかったのだが、旅行前の『まいあがり』もあって、風邪を引いているなどとは露も思わなかった。さらにいえば、ワタシの場合、風邪を引くときはたいてい喉の腫れから始まるので、風邪とはとうてい思えなかったのだ。
妻から「間違いなく風邪を引いているし、その風邪は長引くんじゃないの」と言われても、こんな風邪ぐらいと鼻をくくっていた。もちろんそんなことだから、何ひとつ風邪対策をとるわけでもなく『まいあがり』ゆえのノーテンキないきおいのまま、旅行当日を迎えたのだ。 熱はないが、咳が止まらない。折りしも世間はSARSの余韻が色濃く、SARSの疑いでもかけられたらどうしようと、けっこう本気で心配しながらイミグレーションあたりで緊張したりなんかした。
タイ航空ならではの窮屈な6時間のフライトを克服してバンコクへ到着。さらにトランジットでプーケットへ。飛行機はパンガー湾の美しい景色を眼下にしながら、プーケット島の北の端に作られた国際空港に降り立った。こうして、雨季の湿気にうんざりしながらプーケットの休日は始まった。そしてワタシと風邪は、妻の予言どおり出国するまでの長くつらいお付き合いとなったのだった。