ホアヒン駅からビーチに向かうダムヌーン・カセーム通りが行き止まるところ、右手の広大なスペースを占領するのがソフィテル・セントラルである。通り側は正面ではないのだが、ちゃんと門番の立つ入り口がある。コロニアルな雰囲気いっぱいの裏庭を抜けると、赤屋根が印象的な白く塗られた木造建築が威風堂々と横たわっていた。
本格的なシーズンに入っていないせいかロビーにも人は少なく、美しく手入れされた中庭の向こうのプールから、時折り風に乗った子供たちの声が聞こえて来るくらいだった。
庭を望むロビーの右手に、張り出すように設えられたウッドデッキがあり、オープンエアのカフェ&ダイニングになっている。
生成りのキャンバス地を張ったパラソルが、いかにも上品なリゾートテイストを漂わせている。アイスコーヒーかウォーターメロンジュースか一瞬迷ったものの、ここはやっぱりアイスコーヒーをオーダーすべきだろう。タイ航空のスチュワーデスにも引けを取らない素敵なウェイトレスが、優雅な昼下がりのひとときを演出してくれる。背の高い細めのグラスに入ったアイスコーヒーが、火照った喉ごしに気持ちいい。グラスの中で、手割りしたアイスが涼やかな音を出した。
まさにリゾートの瞬間なのだが、何やら後ろが騒々しい。振り返ると、ロビーの階段当たりで修繕工事が始まったのだ。本格的なシーズンを前にして、客の少ないこの時期に色々と手を入れるのはもっともなことではある。それにしても何も今でなくても…。美しいウエイトレスが申し訳なさそうに微笑んではくれるのだが、グラスの氷をかき回すたびに聞こえていたあの涼やかな音は二度とワタシの耳に届くことはなかった。
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