友人が係わった映画を見るために十三の映画館「第七劇場」へ行った。十三に足を運ぶのは何年ぶりだろう。滅多に来ることのない場所だ。そう言えば前回来た時も第七劇場だった。住まいからも遠いし、この辺りに友人もいないので、なかなか訪れることがないのだ。
映画を見終わって駅に向かうときに撮ったのが上の写真である。交差点から駅までアーケード街があるのだが、入り口に「トミータウン」と大きく書き出されているではないか。十三をトミーと読ますことで、洒落た感じを出そうとしたのだろう。

確かに十三は大阪では場末のイメージが強いし、「じゅうそう」と読めない人も多いから、何かしら新しい呼び名を付けたいと思ったのだろうが、時が経つにつれて薄っぺらな感じが増幅していくような気がしてならない。こう言った安直なネーミングは昭和から平成にかけての時代、全国で蔓延していたようにも思う。
それはともかく、十三は大阪北部では名にし負う歓楽街だった。その頃は行ったこともなく行く気もなかったが、深夜のテレビでは数々のキャバレーや料亭が競うようにCMを流していた。

こうした派手な露出が大阪での十三のイメージを決定的にしたのかも知れない。酒を飲めない若者にとっては近づきがたい場所だったし、いつかは行ってみたいと憧れるような場所でもなかったように思う。
とは言え、時を隔てて、暮れなずむ歓楽街は、実に味のある佇まいを見せてくれる。枯れていく花のように、生き物の悲哀を見事に演じているかのようだ。町も生きているのだと、思わずにはいられない。

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