ナマステ/ネパール顛末記

クセになりそうな、迷宮カトマンズの混沌。

空港からホテル・バイシャリに直行。チェックインして、部屋に荷物を持ち込んで、一服しながら「やっぱりカトマンズはすごいね!」などと、ネパール到着の感激を夫婦で語り合う時間もないまま、30分後にロビーに集合、そして出発。飛行機の遅れと空港で予定外の時間を取られたせいで、デブさんの立てた本日のスケジュールが押していた。こうして我々のカトマンズツアーは慌ただしくも始まったのだ。
最初に連れて行かれたのは「スワヤンブナート」。小高い丘の上にあるヒマラヤ最古のチベット仏教寺院だった。

豚まんの上にとんがり帽子をかぶった黄金色の四角の顔をちょこんと乗せたような、あのストゥーパ(仏塔)を目指して上っていくのだが、デブさんは我々の年齢と体力を心配してか、正面の長い石段を避けて裏のだらだら坂を案内してくれた。一番上にたどり着いてその石段を上から見下ろしたとき、その高さと急勾配に、「これは無理!」と、デブさんに感謝したのはワタシ一人ではなかったはずだ。
次に向かったのは「ダルバール広場」。旧王宮とヒンドゥー寺院に囲まれたカトマンズの中心地と言っていい場所だ。このダルバール広場に着いたときは陽の暮れ始めた頃だった。見上げれば夕暮れの空にコントラストを成すヒンドゥー寺院のシルエット、目の前には買い物なのか仕事帰りなのか、おびただしい数の人、人、人。そしてその背景には遺跡のような町。インドラ・チョークからアサン・チョーク辺りではその混沌とした景色に圧倒されて、写真を撮るのも忘れるほどだった。

ボコボコのレンガ敷きの路地を、人と自転車とバイクとクルマがベルやクラクションを鳴らしながらひしめき合っている。物売りの女が「10個で千円、15個で千円!」と言いながら側を離れようとしない。昼間の暖かさが嘘のように気温はぐんぐんと下がっている。行きかう全ての男と女が得体の知れない雰囲気を漂わせている。電力が不足しているのか、それとも電気代が高いのか、電灯の絶対量が少なくて町全体が暗い。それが町の妖しい雰囲気を増幅しているのだろう。それでも危険な感じを抱かないのは、ワタシも同じアジア人のせいだからなのだろうか。
ひしめき合う人の表情、町の色と匂い、その全てを覆う空気の濃さ。ワタシはこの日一日で、ネパールの、カトマンズの虜になったのは間違いない。

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