そもそもなぜネパールに行くことになったのかというと、言い出しっぺの高岡氏がネパールの僻地に学校を作るというボランティア活動をしていて、それに若干関わった経緯から、学校のあるフィリムまでは無理としても、ネパールの空気を味わいにカトマンズに行こうということになったのだ。ワタシはもちろん、吉田氏も武本氏も一度は行ってみたいと思っていたネパールだから、やぶさかではなかった。
バンコクまでの6時間、バンコク空港でのトランジット5時間、バンコクからカトマンズまでの4時間。いくらかは眠るにしても、この気の遠くなるような時間(一般論であって、フィリムまでの旅を体験した高岡氏は除外する。
というのも、フィリムへ行くには路線バスで4時間、四駆をチャーターして5時間、そこからは車の走れる道路がないので、それから歩いて3日間はかかるらしい)をどう過ごすかが問題だった。いつもの旅よりは幾分多めの本を用意することにした。できればネパールに関連し、なおかつ軽めの内容の本がいい。そんな話を友人としたところ、「夢枕獏の『神々の山嶺(いただき)』がいいですよ、ネパールとエヴェレストがテーマの本ですし、軽くはないけどめっちゃおもろいですよ。貸しましょうか」ということになった。分厚い文庫本で上下2巻ある。内容はともかく、けっこう重い。
めっちゃおもろいとは聞かされてはいるものの、ワタシがおもしろいと思えるかどうかの不安もあって、もう一冊用意することにした。藤原新也の「印度放浪」だ。
藤原新也はワタシが勝手に師匠と仰ぐカメラマンであり、作家である(とは言っても持ってる本はこれが2冊目なのだが…)。ネパールではなくインドの本にしたのは、師匠がネパールの本を出していないからだ。写真を中心に構成された本で、ネパールで撮る写真の参考になればと思ったのだが、結果的には遠く及ばない写真しか撮れなかった。ま、当たり前と言えば当たり前の話なのだけれど…。
で、本を読んだかと言うと、それが全然。深夜便ということで、離陸直後に寝てしまった。朝の5時過ぎに着いたバンコク空港では寝不足もあって、本を読む集中力は全く出ず、ただボーっと時間を費やすのみ。カトマンズへ向かう飛行機では、寝不足解消とばかりに熟睡してしまった。結局、読んだのは印度放浪のみで、しかも関空へ向かう電車の中だけ、写真ページを含めてわずか30ページあまりだった。