渡し船で鶴町に着いた我々は鶴浜に向かった。イケアがあるところだ。イケアのカフェで少し腹ごしらえをするつもりだった。住宅街を抜けると、埋め立て地特有の開けた場所に出た。その向こうにポツンと巨大なイケアの建物がある。さすがに周辺道路だけは整備されてはいるが、荒々しいというか、寒々しいというか、そんな侘びしさの漂う場所だ。窓辺に席を取った。ビュッフェスタイルの厨房で、カレーライスとサラダをチョイスした。レトルトの味が売りなのだろう、そんな高いだけの味だった。

窓の向こうには、港大橋のシルエットが暮れゆく空を横断していた。オレンジ色の太陽は徐々に濃度を上げ、膨張し、真っ赤に燃え始めた。ガラス越しではなく生で見るために、急いで外に出た。あっという間に太陽は港大橋の向こうに隠れようとしていた。辺りには闇が迫りつつあった。

【後記】
「バリ・ジャワの本」「タイの本」「ネパールの本」「お気に入りの本」とつくってきた。今年は、仕事の合間に「猫の本」や、友達家族と行った「遠足の本」もつくってみた。それなのに、一番長く住んでいて、大好きな大阪の本がないのはイカンなと思い続けてきた。今回、念願の大阪の本をつくることができたきっかけは、昨年の秋から始めた町歩きウォーキングである。住み家を中心にして1時間程度ウォーキングを兼ねた町歩きをしたことで、たくさんの好奇心をかき立てられる風景に出会えたのだ。

もう一つは町中サイクリングを共にしてくれる友人の存在だ。町歩きでは気になる場所を覚えて帰って、後日お天気のいい日にカメラを持って出かけた。町中サイクリングは、ある程度当たりをつけてからカメラを持って出かけた。こうしたことを続けていたら、ま、何とか本にできる程度の写真が集まったのだ。
近ごろはめっきり旅にも出なくなったので、これからはもっとしっかり大阪の町を歩き回って、第2弾をつくれるようにしたいと思う。

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