この辺りは谷町六丁目でも谷町筋から東に位置する場所だ。両腕を広げられないくらいの細い路地の密集地で、しかも土地としての高低差もある地域なのである。 以前はいたるところに石造りの階段があった。今は自転車やバイクが通れないからなのだろう、雑な感じのアスファルトの坂道に変えられている。住む人にとっては、雰囲気よりも暮らしやすさが最優先されるのは当然のことと思えるけど、確実に情緒は失われてしまった。

旧熊野街道の周辺と言うこともあって古い町屋も多く残ってはいるのだが、中々に面白いのは、戦後に立てられた住宅だ。江戸時代の頃の棟割り長屋の住人感覚がそのまま残っているかのような、背中合わせの建物が密集している。路地も上の写真のごとくである。大きな家具や大型家電を出し入れすることなど、はなから考えてもいないように思える。そして、写真のごとくの制空権だ。きっと作ったもん勝ちなのだろう。長年の既得権を盾に、最近になって補強しているところが素晴らしい。隣家との諍いがあるようにも見えない。 これらの家はもしかしたら借家かも知れない。きっとそうだ。この中途半端な増築は、大阪の伝統ある風習なのだ。借りてるものでも、狭くなったから広くする。

「金はこっちが出す言うとんねん、どこが悪いんや!」的な発想は、大阪的風景を構築した日本橋の「軍艦アパート」にそのルーツがあるに違いない。

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