じゃんじゃん横町を抜けて、頭を打ちそうなほど天井の低いJRの高架下をくぐると国道の先に「動物園前商店街」なるアーケード街があった。そのアーケード街は想像以上に長く、左にゆるやかにカーブしたその先には踏切があった。今は廃線となって、線路さえも撤去された南海電車の踏切だった。踏切を越えるとそこからは山王商店街だ。線路沿いに左に行くと昭和の香りいっぱいの演芸場があった。○○一座5月興行ののぼりと看板が狭い路地に覆い被さるように並んでいた。今も健在の「オーエス劇場」である。

商店街に戻り先を進むと、三叉路になっていて、左に向かってもアーケードが延びている。何かの催しがあるのか、アーケードの下には万国旗が賑やかにはためいていた。その賑やかさに誘われるようにそのアーケード街に入っていた。そこは新開筋商店街の名前が付いていた。飛田商店街に繋がるまでの短い商店街なのだ。いまはそのほとんどがシャッターを降ろした通りになってしまったが、その頃は半分以上の店が商売をしていた。

そもそも、この辺りまで足を伸ばしたのは、何か面白いモノを売っているのではないか、笑えるモノが手に入るのではないかと思ったからだ。そして、私は見つけたのだった。新開筋商店街の中ほどに大きなショーウインドウのある時計屋さんがあった。どこからどう見ても時計屋さんだ。これまで見かけてきた怪しげな雑貨店や質流れ品を扱っている店とは違う。何気にショーケースを覗くと、ロレックスのデイトナ、サブマリナー、GMT、デイトジャストなどが飾られていた。一瞬「本物!」と思わないでもなかったが、これまでの流れからして、本物であるはずはなかった。でも一応確認はしておこう。店の中には人相の悪いオヤジが座っていた。よく見ると片腕がなく、長袖のシャツがブラブラしていた。

ちょっと怖い感じがしないでもない。 「オモテに飾ってる時計ナンボすんの?」
「一万五千円!」。
正直、私はほくそ笑んでしまった。「笑いのタネ」を見つけた。 その後も何度かこの辺りに足を運んだ。中古のカメラやレンズを探したり、さらに笑える何かを求めて、通ったことのない横道に入ってみた。そこで見つけたのが右ページ上の店である。いったいどこで仕入れたのだろうかと思う商品が並べられている。しかも異常に安い。まさに「何でも安い店」なのだ。男がやって来て熱心に店の中をのぞき込んでいた。どうやらベルトに興味があるらしい。しばらく悩んでいたが、二度ほど振り返りながら去っていった。

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